光免疫療法 の 欠点 は 特異抗体 の数の少なさ. 卵巣がんへの試み
近赤外線光免疫療法(NIR-PIT)は、
光吸収剤と特異抗体を利用した
新たな癌治療法です。
光免疫療法では、
特異抗体は非常に重要であり、
ガン細胞膜上の
特定のタンパク質に対する抗体が
その結果を左右するといっても過言ではありません。
言い換えれば
あまり特異性が高くない抗体を用いて
光免疫療法をすると
非特異的に抗体-IR700複合体が
細胞膜に結合してしまいます。
そのため、
近赤外線を与えると
ガン細胞以外も
ダメージを受けるということです。
2016年に発表された
以下の光免疫療法の論文では
卵巣がんを標的として
「β-D-ガラクトース受容体」に対する分子(抗体と類似)を試しました。
Oncotarget. 2016; 7(48):79408-79416.
doi: 10.18632/oncotarget.12710.
Near-infrared photoimmunotherapy with galactosyl serum albumin in a model of diffuse peritoneal disseminated ovarian cancer.
ガラクトシル血清アルブミンは、
アルブミンのカルボキシル基に
ややこしいですが
要するに
修飾を受けた「アルブミン」です。
実は
特有の修飾を受けたアルブミンは
卵巣癌を含む多くの癌の細胞表面上で
過剰発現しています。
この特殊なアルブミンは
細胞表面レクチンである
β-D-ガラクトース受容体に結合します。
この一連のプロセスが
細胞にどういった役割や意味があるのかは
まだ分かっていません。
しかし
この分子を利用することは可能です。
そこで
β-D-ガラクトース受容体に結合する
特殊なアルブミン-IR700複合体をつかって
播種性腹膜卵巣癌モデル(SHIN3細胞)における光免疫療法の
効果を検証しました。
結果です。
特殊なアルブミン-IR700複合体は
SHIN3細胞に迅速に結合し、
細胞内に取り込まれ
エンドソームと呼ばれる小胞内で蓄積しました。
さらに
特殊なアルブミン-IR700複合体を投与し、
近赤外線を照射することで
ガン細胞の増殖抑制が
マウスレベルで認められました。
ただ、
これまで他のガンに用いられているような
抗体-IR700複合体ほど効果はなく、
さらなる効果的な特異抗体が必要という結論に至りました。
試行錯誤の繰り返しが
技術を一歩一歩進歩させるんですね。
広くがん患者さんに
光免疫療法が使われる日が
一日でも早く来ることを望みます。