photoimmunotherapy 光免疫療法のブログ

胃がん末期の父に免疫療法を薦めました。当時の技術は未熟。間に合いませんでした。抗ガン剤治療の効かなくなった末期ガンの人の希望となるように最新のがん治療情報を提供します。

光免疫療法 が 膀胱がん につかえる可能性を示唆. 特異抗体には上皮成長因子受容体.

光免疫療法を膀胱がんモデルに対しておこなった
アメリカ国立がんセンターからの報告です。

Mol Cancer Ther. 2017 (10):2201-2214.
doi: 10.1158/1535-7163.



これまでの経緯

膀胱ガンに対して光を用いた治療は
比較的昔から用いられてます。
ただ問題はその特異性です。
現状では
正常細胞をも傷害してしまうのです。


この研究では
EGFRを発現する膀胱ガンを標的として
光免疫療法(PIT)の効果を評価しました。

EGFRとは
epidermal growth factor receptor、
上皮成長因子受容体です。



方法
まず
抗EGFR抗体であるパニツムマブを
光吸収剤(PA)、IRDye 700Dx(IR700)で標識しました。
こうして作製した
パニツムマブ-IR700抗体複合体を
以下の実験に用いました。


膀胱ガン組織マイクロアレイ
および
膀胱癌細胞株について
EGFRの発現について分析しました。

さらに
増殖アッセイ、
透過型電子顕微鏡
および
反応性酸素種の生成を用いて、
光免疫療法による細胞死のメカニズムを研究しました。

最後に、
マウスに膀胱がんを移植して
in vivo効果を異種移植片で調べました。



結果として

膀胱ガン組織アレイのEGFR染色では、
ほとんどの膀胱ガンが
様々なレベルでEGFRを発現しており、
中でも扁平上皮細胞癌(SCC)が
最も強くEGFR発現していたことが明らかとなりました。

近赤外線によって活性化された
パニツムマブ-IR700抗体複合体によって、
膀胱ガンUMUC-5細胞は効率的に死滅しました。

一方、
パニツムマブ単独、
近赤外線照射なしのパニツムマブ-IR700、
または近赤外線単独では
細胞に対して効果はまったくありませんでした。


走査型電子顕微鏡観察から、
光免疫療法による細胞死が
「壊死」によることがわかりました。

また
一重項酸素種は細胞死に寄与しました。
一重項酸素とは、
種々の活性酸素種(フリーラジカル)を発生させて。
細胞にダメージを与えるのです。


パニツムマブ-IR700複合体を用いた光免疫療法では、
UMUC-5異種移植片ガンの増殖が有意に減少しました。


結論として
今回の結果から
光免疫療法は、
膀胱ガンの新たな標的治療薬となりえます。

さらに
抗EGFR抗体であるパニツムマブを用いることで
EGFR発現膀胱ガン細胞を「選択的に」死滅させるため、
膀胱ガンの患者さんに
将来有効な治療法となるはずです。

感想

光免疫療法では
ガン特異的な抗体がカギとなります。
今回の報告から
膀胱がんにおいては
EGFRに対する抗体が
使える可能性を実証しています。

一日も早く日本で
光免疫療法の治験が始まることを望んでいます。